前回③ ガイ・スタンディングさん著書の話では、BIを理解する基本的な概念として、Justice, Freedom, and Security (正義、自由、安全) がキーワードとなっておりました。
今回読んだ著書「隷属なき道 AIとの競争に勝つベーシックインカムと1日3時間労働」では、ルトガー・ブレグマンさんが次の3つをキー概念として挙げています。①週15時間労働 ②ベーシックインカム ③国境のない世界
タイトルを見てもわかる通り、こちらの本はベーシックインカムそのものを論じているものではなく「AI」との絡みや、国内外を問わず全ての貧困問題、貧富の差是正、長時間労働などについて幅広く論じられています。
我々は経済の発展によって豊かな余暇を得られる「はず」だったのに、現実はちっともそうなっていませんよね。
長時間労働は結構当たり前のように見られますし、余暇のことだけでなく経済面でも、比較的豊かな国・日本でさえお腹いっぱいご飯を食べることがでなくて、お腹を空かしている子どもが確実に存在しているのです。なんせ「子ども食堂」が必要なくらいですから・・(:_;)
日本以外に目を向ければ、今日明日の食事に困っている餓死寸前の人さえ、世界中にまだまだたくさんいるのです。何かがおかしい、狂っている…そう感じる人は決して少なくないはず。
そんな状況の中で、経済学者たちがベーシックインカムの導入について理論的に論じ、発信してくれているのが現状と言えるのでしょう。
著者であるルトガー・ブレグマンさんは、経済学者ではなく歴史家・ジャーナリストです。生活保護や母子手当等については、経済学者が論じていた内容とと同じく「福祉はいらない、直接お金を与えればいい」(=BI導入) という内容を書かれていましたので、こちらは今回は割愛させていただきます。
本の前半部分はこれまで読んだ本の内容(基本的なBIのこと)との重なりが多く、すらすらと読み進むことができました。そして、この本の真骨頂は後半部分ではないかと! かなりexcitingでわくわくする内容が書かれています。
週15時間労働
イギリスの経済学者であるケインズは、2030年には労働時間が週15時間になる、と1930年の講演で述べたそうです。なので、本当は今頃は「増えすぎた余暇をどう過ごすか」が問題になってた「はず」でした。
ケインズだけではなく、アメリカのB.フランクリンやカール・マルクス、その他多くの偉人!?たちも同じ見解だったとのこと。
ところが、そのように時代は進まなかった…「ブラック企業」なんて言葉が出てくるくらい、長時間労働を強いられる人は多くなっています。
ところで、長時間労働すれば、それだけ生産性は上がるものなのでしょうか?
フォード、ケロッグ、ヒース(イギリスの首相)らの事例をみる限りでは「真逆」の結果、つまり「生産性と長時間労働に相関性はない」という結論は明らかであるように思われます。
1980年代、アップル社の従業員は「週90時間労働、大好き!」とプリントされたTシャツを着ていた。後に、生産性の専門家が推計したところによると、もし彼らの労働時間がその半分だったら、世界の人々は画期的なコンピュータ「マッキントッシュ」を1年早く楽しめたかもしれないそうだ。
現代の知識を基盤とした経済では週40時間労働でも多すぎる。と示唆する強い証拠がある。調査によれば、つねに創造性を発揮している人が生産的でいられるのは、平均で1日6時間に満たないそうだ。創造力に富み、教育水準の高い人々が住む富裕国ほど、週の労働時間を短縮してきたのは偶然ではない。
ルトガー・ブレグマン「隷属なき道」
さらに著者は、「労働時間の短縮で解決しない問題があるだろうか」とさらに鋭く、次のような項目別に論を展開しています。①ストレス ②気候変動 ③事故 ④失業 ⑤女性の解放 ⑥高齢化社会 ⑦格差
この問題、日本の場合はまず、昔ながらの日本企業の在り方…大して仕事もないのに、エラい人が帰らないと定時で帰りづらくて自分も残るとか、長時間働いている「フリ」をしている人が「会社に貢献している」とみなされて出世するような「在り方」から脱却することが先ですよね(;^ω^)
でもBIが導入されれば、そういうクダラナイ問題も自動的に・一気に解決できそうです。
「くだらない仕事」はやめる
本当に必要な、世の中の役に立っている仕事ってありますよね。医療・看護、介護、教師や警察官、研究職、清掃(ゴミ収集)、宅配便などなど。
ところが、高い給料をもらっているのはそういう人々ではなく、「お金を移動させる」だけでお金儲けをしている人たち。「社会にとって重要でも必要でもなく、破壊的ですらある富の移転者が富み栄えるというようなことが、なぜ起こり得るのだろう?」
…この著者の疑問呈示。拍手したくなりました(笑) その答えは「くだらない仕事」という概念がヒントを与えてくれています。
専門職の半数が自分の仕事は「意味も重要性もない」「自分はくだらない仕事をしている」と感じている(自分で自覚している)そうです。
本当は、もっと価値のある仕事をしたい。でも、例えば研究職についた元クラスメートは「自分よりもずっと低い収入で働いている」状態。それであきらめざるを得ない状況、なのだそうです。
つまり、世の中にとって価値のあることを生み出したり、行ったりすることが必ずしも妥当な報酬につながっていない、ということなんですよね。。
そして、それらを是正するためには株の売買の度に生じる「取引税」を導入して、瞬間的な株の売買によって儲ける仕組みを止めさせる、ということを著者は提案しています。
こういった仕事がやがて「儲からなく」なることで、優秀な人々が「くだらない仕事」を止めて「本当に必要な、重要な仕事」に戻ってくる世の中が実現すると良いなぁと思います。
社会のためだけではなく、何よりもご本人にとって。
AIとの競争には勝てない
このあたりは様々な経済学者たちが発信している内容と一致するところで、「今後ほとんどの仕事がなくなるときがくる」というのは事実だと思います。
だからこそ、早めにBI導入が必要なのでしょう。それと合わせて、週15時間労働の方も実現に向けて動き出すときがきていると思います。
財源として主軸となるのは税金。労働への課税ではなく資本に対する課税、という部分もこれまで読んできた本とほぼ同じ内容となっておりました。
国境を開く
これ、これです。この本の中で最もexcitingに感じたトピックは。著者によれば、国境を開くことで富は増大するとのこと。
一見「へ?」という感じでよく分からなかったのですが…(^^;)
例えば、発展途上国などに支援金を送るなど様々な支援活動ってありますよね。自分もささやかながらUNICEFでマンスリーサポーターをしているので、こういう問題にはとても関心があります。
もちろん金銭面での援助は「しないよりはマシ」なのでしょうが、しょせん対症療法に過ぎません。それはもう、分かってはいるのですが・・
更に悪い事には、貧しい国は資本家の租税回避地として利用されてしまい、外国からの支援金額の3倍を脱税によって失っているそうです。こういう事実を知るとなんとも空しい気持ちに…支援しても現地の人には届かないってことですよね。
ところがここで朗報!
経済学者たちによれば、「開かれた国境が実現すれば、世界総生産における予想成長率は、世界的な労働市場の動きのレベルに応じて、67%から147%に及ぶ」という点で複数の研究結果が一致しているそうです。
世界規模で貧富の格差をみてみると、なんとわずか67人の「超・お金持ち」な人が、35臆人分の総資産よりも多い富を所有しているとのこと。国境を開いて人が移動することによって、この格差が少しずつフラットになっていく、というイメージでしょうか。
「自由な移住」…この響き、「格差是正」とか「貧困撲滅」とか重要な問題を解決に向かわせるという側面だけでなく、何となくロマン!?あふれるイメージがわきませんか!? え、私だけ?(笑)
「移住」というと、これまではビザの問題やら国からの許可を待つとか、煩雑な手続きや時間がかかること等々…がどーんと頭に浮かびますが、世界中どこでもフリーに行ったり来たり&住むことができたら素敵だな、と「単純に」思います。
コロナ禍で思う事
BIをはじめ週15時間労働とか国境を開くとか、格差是正とか貧困問題の解決とか。これらについて、昨年からのパンデミックがかなり「あと押し」をしているように、自分には感じられます。
GO TO トラベル(笑)が「上手くいかなかった」のは、結局「摂理に反している」からなのかもしれません。そもそもこの制度を利用する人って、ごく一部の恵まれた人でしたよね。
お金があって、生活に困っていなくて、しかも仕事上で移動の制約もない、という人々。
お金に困っていないとしても、エッセンシャル・ワーカーである医師・看護師、介護の方々などは仕事がら遠出は控えられていたのではないかと思います。
一部の人だけが恩恵を受ける内容ではなく、全ての人にとって有益な策として迷わずBIを導入する意義が、本当に「今だからこそ」あるのではないかと強く感じています。
実際、コロナ禍が原因で生活が困窮している人にも、強い支援にもなるはずだと思います。
たくさんのお金はもらえないにしても、最低限の生活は国が守ってくれる…この安心感は何ものにも代えがたいのではないでしょうか。
ってか、こんな当たり前のこと(安心感)が1ミリも感じられないこと、「自己責任」という言葉でなんでもかんでも切り捨てられてしまう現状って、「日本、もう終わってる(笑)」なんじゃないかなぁ。
これからは本当に自分がやりたいこと、人や社会の役に立つことを、お金に関係なく取り組むことができる時代に突入していけることを祈りつつ…
とにかく、さっさとBI導入してくれよっ(笑) (心の声!!)
そして、いますぐに困っている人をなんとかしてあげて!!…と、心の底から思います。
もしもBIをマニフェストに入れてくれる政治家さん・党があるなら、迷わず選挙で一票入れますね。まぁ、一応政権放送とかで内容の最終チェックはしますけど(笑)
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