しつこいようですが(^^;)、ベーシックインカムのお話第3回目です。
「この本が最もBIのことを総括的に理解する手助けになる」というお話を伺い、今回はガイ・スタンディングさん(経済学者)の著書を読んでみました。
裏表紙に載っている言葉、Justice, Freedom, and Security (正義、自由、安全)
この概念が、BIを一言で表現する…ということを理論的に説明されている内容になります。
Justice 社会正義
色々な側面があると思いますが、大きな問題としては現存の福祉制度が欠陥だらけ(笑)であり、しかも無駄なコストがかかっている、という点ではないかと。
例えば生活保護のような制度。これを受けるためには、自分自身のプライベートな領域まで「ずかずかと踏み込まれる」恥辱を味わうことを、申請のときに強いられる制度になっていますよね。
このことから、この制度を利用することが「本当に必要な人」の多くが申請をしなかったり。全体の80%にものぼる人たちが利用できていない、と言われています。
BIではあればこのような問題は一切生じません。BI導入に伴って個人の財産や行動を調査したり…といったお役人の無駄な仕事が全て、必要なくなります。このコスト削減だけでも大きいのではないでしょうか。
よく聞かれる「反論」に、「生保のときに受けられていた給付額が減らされる」というものがあります。例えば今まで20万円支給されていた人が、BIになると7万円になる、とか。
これはBIと福祉制度を混同させて論じているから…という勘違いに過ぎません。BIを導入したからといって、それ以上に保護が必要な人に「上乗せ・福祉の支給」をしてはいけない、ということにはならないからです。
著者のガイ・スタンディングさんも、BI導入初期・移行期にはこれまでの福祉制度による給付金にプラスする形でBIを支給するのが望ましいだろう、と述べています。
さらに、BIには行き過ぎた資本主義の歪みを是正する役割もあります。つまり、あまりにも一部の人に富・財産が偏っている、という地球規模での現状を修正する必要性が今、ますます強まっているということなのでしょう。
スピリチュアリズム的に考えれば、元々は神から平等に与えられている「はず」の地球の財産。お金も食べ物も土地も、全て…
ところが、人間が長い間利己的な側面ばかり強めてしまったために、現在の不平等の状況が生じていると考えられます。「使いきれないほどのお金を持つ人がいる一方で、今日の食事にも困っている人がいる」という問題のことです。
自分さえよければ…という利己主義な人が増加すればするほど、この状態は今後も一層悪化していきます。人々に霊的成長を促したり期待する!?には時間がかかりすぎますので、やはりBIのような「一気に解消に向かって突き進める」制度により強制的にリセットすることが必要なのかもしれません。
このことから、BIは本質的に「資本の再分配」という認識が一番しっくりくるのかな、と感じます。
地球人すべてが「受け取る権利」を持っているということなんですよね。当然の権利を主張したり享受するのに、何も躊躇する必要はない、ということです。
Freedom 自由
著者によれば、BIにより次の現実的な自由を強化することができると考えられます。
困難だったり、退屈だったり、薄給だったり、不快だったりする仕事に就かない自由
経済的に困窮している状況では選べないような仕事に就く自由
賃金が減ったり、不安定化したりしても、いまの仕事を続ける自由
ハイリスク・ハイリターンの小規模なベンチャー事業を始める自由
経済的事情で長時間の有給労働をせざるをえない場合には難しい、家族や友人のためのケアワークやコミュニティのボランティア活動に携わる自由
創造的な活動や仕事に取り組む自由
新しいスキルや技能を学ぶことに時間を費やすというリスクを負う自由
官僚機構から干渉、監視、強制されない自由
経済的な安全を欠く相手と交際し、その人と「家庭」を築く自由
愛情を感じられなくなったり、虐待されたりする相手との関係を終わらせる自由
子どもを持つ自由
ときどき怠惰に過ごす自由
ガイ・スタンディング「ベーシック・インカムへの道」
冷静に考えれば、これらは人間が本来持っているはずの「自由」のはず。
それが、今の地球では富の不均衡が原因で、富や権力を持っている人によって一方的に・不当に略奪や搾取されることがある、ということですよね。
著者はこの部分だけではなく、随所で繰り返しその「不当性」については徹底的に論じており、弱者が本来持っているはずの権利や自由をBIにより取り戻すべきである、と主張しています。
ありがちなのは、強者によって特定の道徳を押し付ける・行動を指図する・何かを強制する・それに従わない人を処罰する、などなど。
これらのことは社会保障制度の中で、役所と申請者との関係性でみられるのと同時に、普通に会社で働いている人にも当てはまるのではないか、と感じます。
経営者もしくは、経営者が選んだ「上司」の命令には、まさに「特定の道徳を押し付ける・行動を指図する・何かを強制する・それに従わない人を処罰する」といった側面が含まれることは少なくありません。
経済的な自由が保障されていない状況では、これらに甘んじて「我慢する」しか、「雇われ人」には選択肢がありません。
会社と雇われ人の関係とは、結局「隷属関係」「奴隷制」(笑)なんですよね。これも行き過ぎた資本主義の歪みのひとつではないかと思うのです。
著者はこういった問題について、人々が「労働」ではなく「仕事」に移行することが(BIにより実現)できる、と表現しています。
仕事というのは有給の仕事だけでなく、ボランティア活動やコミュニティ参加、子育てやケアワークなども含まれており、本人が心から望む活動を存分に行うことを可能にするのが、BIにより得られる自由ということになります。
逆に「労働」というのは、前述の「奴隷制」により縛られる「会社と雇われ人との関係性」のことを表現しているのでしょう。
Security 基礎的・経済的な安全
BIが実現することによって、人々の考え方も変わる、と著者は主張しています。
安全を手にした人は、自分や家族、コミュニティの生活を向上させたいという欲求と、自然界の豊穣と美を守る必要性の間のバランスを取れるようになる。基礎的な安全が保障されることの価値は、極めて大きい。
特権を握る支配層がほかの人たちの安全を奪うことによって利益を得ることを許さず、「よい社会」を築きたいと願うなら、すべての人に安全が約束される社会を築くべきだ。自分が欲しいものを他人が持つことを願うのは勇気がいることだが、ベーシックインカムはそのような制度である。
。。。すごくないですか、この文章。なんて崇高な理念✨
こういう方こそ、(ご本人に自覚はないと思いますが)真のスピリチュアリストと言えるのだと強く感じました。
見出しで示してきた3つの要素「正義・自由・安全」について、この価値観の土台にあるのは一言で言えば「共感」である、と著者は述べています。
その根底には人間への強い信頼があり、共感力が高い人は他者の立場に立って物事を考えることができるので、「誰もが自分の望む人生を生きる権利がある」というBIの根っこを支えているとも言える理念を実感として理解できる、ということになります。
BIに反対する人たち
一言で言えば、富裕層、特権階級層(笑)。現状の、歪んだ資本主義の恩恵を受けている人々です。
彼らは「ただで人々に何かを与えるなんておかしい」と言ってきますが、一方で自身が「何もせずに得ているもの」については不問、という公平性に欠ける言動を示しがちです。
「何もせずに得られる富」とは、例えば著作権、資産を所有しているだけで得られる不労所得、富裕層優遇の税金制度の恩恵を受けたり、租税回避を可能にする抜け穴制度を利用したり、富裕層優遇の補助金制度の利用、そして遺産相続。
「ただで何かを与えるなんておかしい」と主張するのであれば、それらの「特権制度」についても反対するのでなければ理論的な整合性を欠く、と著者はばっさり斬っています。カッコイイ!!ですね(笑)
反対派はBIを怠惰・依存・たかり、などのイメージと結び付けようとしますが、富裕層が仕事をせずに遊び呆けることには言及しません。結局、こういった人たちは究極の利己主義者、ということなんですよね。
あと一押し? 政治に圧力をかける
BIを導入に導くためにあと行わなければならないのは、「政治に圧力をかける」ことだそうです。
は? 圧力? どうやって? と素人には難しく感じますが、あきらめるのはまだ早い! みたいですよ。
著者をはじめとする「経済学者の権威」のような人々が、このように情報を発信・提供してくれているのですから、身近な人々にその内容を広めるのが一般の人・先にBIのことを知った人の役目と言えるのではなのでしょうか。
そして少しでも賛同者を増やして、可能であればコミュニティなどにも参加して、BI導入を政策のひとつに掲げる政治家に投票すること…につなげていけると良いですね。
この問題に真摯に取り組む、「弱者の見方! 共感性と霊性の高い!?(笑)」政治家さんの出現を期待したいところです。
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